逃避行

 

※前記事の続きですたったひとりの聖戦 - 見ざる聞かざるゴウカザル

 

早朝。オナホ童貞を捨てた僕は途方に暮れていた。使用済のオナホをどうすればいいか分からなかったからだ。

僕が買ったオナホは使い捨てタイプのため使用後は当然捨てなければならない。ずっと部屋に置いていたら異臭がして女の子を呼べない部屋になってしまうだろう。

でも捨てるってどこに?前記事にも書いたが僕は実家暮らしなので家のゴミ箱に捨てたらすぐにバレてしまうだろう。ならば残された道は外しかない。この異形を外に捨てる…。なんか罪に問われないのだろうか。脳裏に浮かんだのは公衆トイレに捨てられた生後間もない赤子が発見された悲しいニュース。使用後のオナホを外に捨てるというのはそれと同じようなものではないか?殺人の罪を犯すより家に捨てて自分が業を背負うほうがマシなのではないか?

いや冷静になるんだ、こいつはただのオナホ。それ以上でもそれ以下でもないんだ。恐れることはない。ただそこらのゴミ箱に捨てるだけだ。

覚悟を決めた僕は「外食をしてくる」と家族に言い残し車に乗り込んだ。

 

 

時刻は昼過ぎ。近所の定食屋で昼食を済ませた僕はこの極秘ミッションの作戦を練っていた。普通に考えるならコンビニ辺りが妥当だろう。しかし近所のコンビニは今後も使うため危険だ。そのため少し遠出したほうが賢明だ。鞄の中にオナホが入っているというこの状況は色々とマズイので逃げるように店を後にした。

辿り着いたのは町外れのセブンイレブン。さあ、ここのゴミ箱にブツを捨てればミッションコンプリート、簡単な仕事だった…。

成功を確信したそのとき、僕は違和感に気付いた。

 

ない!ない!ゴミ箱が、店の前にない…!

 

そうだ、失念していた…。最近のコンビニは外のゴミを捨てに来る人を防ぐため、店内にゴミ箱を設置しているのだ…!なぜこんな簡単なことを忘れていたんだ…。自分の無力さを痛感した。鞄の中の爆弾は中が見えないよう箱や袋に入っており、それなりの大きさになっている。そのため店内のゴミ箱に入れたら確実に怪しまれる。悔しいが、この場所でのミッションコンプリートは断念せざるを得なかった。

 

 

あれからどれだけの時が経っただろう。いくら車を走らせても車窓から見えるコンビニは外にゴミ箱はなかった。助手席にはまるで僕の彼女かのようにブツが鎮座している。違う、お前は某子ちゃんじゃない、某子ちゃんの局部の形をしたクローンなんだ。お前は作られた生命なんだ。お前は役目を終えたんだ。大人しく処分されてくれ。

そうは思えど正直どこを探せばこいつを処分できるか分からなかった。公園?いや、ゴミ箱があるか分からないし公共スペースにこいつを捨てるのは危険すぎる。じゃあどこに…。

 

瞬間。僕の脳に電撃が走った。

イートインだ…!!! 

 

そう、イートインのコンビニなら、適当に買い食いしてコンビニのゴミと一緒に店内のゴミ箱に捨てても怪しまれない!完璧な計画だ…。このときばかりは自分のことを天才だと思った。

そうと決まればあとは探すだけ。ミニストップファミリーマートなら高確率でイートインスペースがあるだろう。僕は最後の旅を始めることにした。

 

 


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見つけた。辿り着いた。ミニストップ…。ここが…ラフテル…!!ゴミ箱は店内にあるがちゃんとイートインスペースがある。ゴールはもうすぐそこだ。

適当にジュースを買い、飲み干した。いつもよりちょっとだけ美味しく感じた。

さああとはオナホを捨てるだけだ。店員は誰も僕を見ていない。ジュースと一緒に捨てるから怪しまれるわけもない。これで、長かった旅が終わるのだ…。

そう、捨てるだけ。それなのになぜか僕はそれを行動に移すことができなかった。おかしな話だが、このオナホに愛着が湧いてきていたからだ。考えてみればこいつは僕が初めてを捧げた相棒であり、今日共にドライブをした友達でもあるのだ。そして某子ちゃんを型どった彼女の生き写しでもある。簡単に捨てられるわけがないのだ。

だけど僕は君と別れなければならない。つらい選択だった。まるで大切に育てたバタフリーに別れを告げるサトシになった心境だった。

君は作られた生命だった。

君は某子ちゃんの代替物だった。

君とはたった一週間の付き合いだった。

だけど僕はこの世界で唯一君のことを理解している。君はその役目を終えたんだ。

君には世話になった。君のことは忘れない。

さよなら…。

 

そのあとはバラードをしこたま流して帰った。彼女と別れた直後のような気分だった。彼女いたことないけど。


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