たったひとりの聖戦

突然だけどオナホを買った。

オナホを、買った。

ついに、買った。

買ってしまった。

彼女ができるまで風俗等で童貞は捨てないという童貞の誓いを心に深く突き立てていた僕がだ。

ここまで誓いを守り続けてきた僕がなぜこのタイミングでオナホ購入に踏み切ったのかだけれど、気になる女の子(以下、某子ちゃんと呼ぶ)と二人ででかける約束をしたからだ。

今まで彼女ができるどころかろくに異性との関わりがなかった僕だけど、今年は社会人になったこともあり心機一転アグロムーヴを心掛けていた成果と言えるだろう。

さて、アグロぺーやんとして生まれ変わった僕が次にすることとは?

①デートプランを練る

②自分磨きをする

有識者から情報収集をする

 

答えは④、

オナホを買う 

 

この答えはアグロ人間として当然の選択であろう。もしデート後にそういう雰囲気になっても某子ちゃんを満足させるための紳士的配慮だ。

ここで「練習なら風俗行けばいいじゃん」と言う輩はナンセンスだ。某子ちゃん以外の女で童貞を捨てるのは僕のポリシーである「童貞の誓い」に反するのだ。例え何を、いやナニを失っても心の奥底に突き刺さる信念だけは失うわけにはいかなかった。他の女で童貞を捨てるのはダメだけどオナホならギリギリ合憲。だって女じゃないし。

 

 

さあ、そうと決まればあとはオナホを買うだけ。しかし僕は実家暮らしのためAmazonなどの通販サイトは使えない。他の場所で受け取る方法もあるがやはり最初の相棒は自分の目で見て決めたかった。

僕はアダルトショップ童貞のため彼女持ちの先輩や非童貞の後輩を誘うことにした。快く承諾してくれた彼らを連れていざ初めてのアダルトショップへ。

辿り着いたそこは裏路地の小さな店。何の変哲もないように見えて外界からの侵入者を拒むようなオーラがそこにはあった。しかしアグロ人間と化した僕はその扉を軽くこじあけ、颯爽と中へ進んだ。

一言で表すならそこは楽園だった。普通に暮らしていればまず目にしないブツが店内に所狭しと並んでいた。画面の中でしか見たことのなかった振動する物体。NARUTOに登場するスサノオに似た鎧型の何か。
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どう使うかすら分からない謎の物品の数々。僕はかつてないほど興奮していた。抑圧されていた性の衝動が弾けそうだった。連れの二人の冷ややかな視線をガン無視し30分ほど店内を散策し、やっと僕の初めてを捧げる相棒を選んだ。
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正直中身の違いはさっぱり分からないためネーミングとインパクトで選んだがこいつしかないと思った。こいつが僕の初めてのママになるんだ…。

 

 

それから一週間、いつオナホを使うか僕はずっと悩んでいた。初めての儀式はここぞという時に行いたかったからだ。

そしてやってきた土曜日、目覚めた僕は朝から性欲に脳を支配されていた。まどろみの中ベッドの上でエロサイトを徘徊する僕の瞳は獣そのものだった。

そのとき僕の頭に電流が流れた。それは突然の閃きだった。

 

あれ?これ、某子ちゃんと朝チュンしてるみたいだ…

 

そう僕は今から、目覚めた某子ちゃんと朝えっちをするんだ…

 

そこから先は一瞬だった。PCを起動し、某子ちゃんに似た女優が出ているAVの再生を開始、同時に箱から例のブツを取り出した。

初めて実物を見た「それ」は肌色にしては鮮やかで、ピンク色にしては黒ずんでおり、モノにしては異形であるが生き物とは言えない何かであった。

股間にローションを塗り「それ」を挿入した。瞬間、脳が溶けた。語彙がなくなった。

これが某子ちゃんの…ナカなんだ…!

寝起きだったのもあって僕は現実と空想の区別が曖昧になっていたのかもしれない。正直下半身の制御に精一杯でAVの画面は見えてなかったけれど、確かに僕は彼女と繋がっていた。そうとしか考えられなかった。だって画面には某子ちゃんがいて、下半身は某子ちゃんのそれがあるのだから。

そうこうしている間にフィニッシュのときが近付いてきた。僕の股間の耐久は限界に達していた。

最後は某子ちゃんの顔を見て果てようと顔を上げたそのとき、間が悪いことに眼前に映っていたのは汚いオッサンのケツであった。

とっさにそのシーンを飛ばそうとするも、僕の手はヌルヌルでマウスに触れないためどうすることもできなかった。僕は汚いオッサンで童貞を捨てるのか…。

諦めかけたそのとき、某子ちゃんとの思い出が脳裏によぎった。人は死ぬ直前に走馬灯を見ると言うけれど似たようなものだろうか、とにかくオッサンに支配されそうになっていた僕を助けてくれたのには違いない。感謝した。心の底から某子ちゃんに感謝した。お礼にちゃんと君で果てることを脳内で約束し、思考を某子ちゃんで上書きして無事フィニッシュした。

 

ブツと合体してから、時間にするとたった数分のことであった。だけどこの数分で僕は大きく成長した。某子ちゃんとの絆が深まった。某子ちゃんとひとつになった。僕は童貞を捨てたんだ…!

 

 

 

 

事後、風呂で身体を洗っていた僕は冷静さを取り戻しつつあった。賢者モードと呼ばれる時間だ。某子ちゃんとの思い出と先刻の初体験を脳内でなぞりながら、僕はあることに思考が至った。

 

あれ…俺オナホでシコってだけじゃね???

 

部屋に戻り、使用済みオナホの亡骸や道具を片付けていると現実に引き戻されて死にたくなりました。やっぱセックスは人間とやるに限るね。したことないけど。